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雑記ブログ卒業

生活に役立つ雑記ブログ

ポッポちゃんの瞳は僕の後ろを眺めて透き通っていた

雑記 雑記-小説

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「今日は寒い朝だな。」

毛布にくるまった体は寒かった。今日は何度くらいだろうか。マイナスかもしれない。動かない体を叩き起こして布団から跳び起きた。「うう、寒い。」部屋の温度は10度。「今日は家でゆっくりしたいなあ。」

そんなことを考えながら服を着替えた。いつも外に出かけるスタイルは決まっている。下はジーパン、上はダウン。ユニクロで買ったダウンなんだけど、とても暖かい。今日は活躍してくれそうだ。

家の玄関を開けた瞬間、隙間風が僕を襲った。

「寒い。」

こんなに寒かっただろうか。昨日までは暖かい日差しが照り付けていたのに。冬の到来を急に感じて寂しくなった。

そんなことを言っている時間はない。もう8時だ。8時に集合なのに。

急いで車を走らせた。その日はなぜか道路が空いていて走りやすかった。車の中でこう呟いた。「どうして8時集合なんだろう。9時にしてくれればいいのに。」

あの子はいつもそうだ。待ち合わせする時の時間が早過ぎる。8:00集合なんて。志村けんのテレビを見過ぎていたのだろうか。「8時だよ、全員集合」の見過ぎだよ。そんな愚痴を呟きながら車を走らせた。

時計の針は午前8時をとっくに過ぎて8時15分になっていた。

「悪いことしちゃったな。」

待ち合わせのコンビニに着いた。謝らなくては。急いで降りたけどそこには誰も居なかった。「あれ?待ち合わせの場所間違えたかな。」ふとポケットに手を入れる。携帯がない。ああ、枕元に置いたままだった。なんでこんな時に。

それから30分待ったけど結局あの子は来なかった。どうしたんだろう。コンビニで珈琲を買ったけど冷えてしまった。コンビニの裏には小さな公園がある。その公園のベンチで一人、珈琲を飲んだ。僕の珈琲はすでに飲み干し、もう一つの珈琲はもう冷え切っていた。

「あ~あ。今日は最悪な日だな。」

そう呟いた瞬間、僕の視界になにかが動いたんだ。

それは一羽の鳩だった。一羽しかいないなんて珍しい。こっちを見ている。何見ているんだ。落ち込んでいるから慰めようとしているんだろうか。鳩は何も言わずこっちに近づいてくる。

「どうせなにか食べ物が欲しいんでしょ、何もないよ」

そう言いながらもポケットにあるチョコに手を伸ばした。これはだめだ、鳩にあげるものではない。そう思いながらも、チョコ一つくらいどうでも良い気持ちが頭の中を駆け巡っていた。

「チョコ食べるのかな?」

そう思った時にはすでに鳩にチョコを差し出していたんだ。「ああ、僕はなんて馬鹿なんだろう。鳩がチョコを食べるはずがないのに。」

でもその鳩はポッポと少しだけ鳴いてチョコをくわえたんだ。思わずびっくりしたよ。僕はもう一つチョコを持っていることを思い出し、取り出した。そして自分の分のチョコを食べた。甘いけど何だか寂しい味がした。どうしたのかその鳩は一向に逃げずこちらをずっと見ている。

「どうしたの、もうチョコはないよ。」

そう言いながら僕は鞄から小さな花束を取り出していた。古びた鞄に小さな花束が入っていることに驚いたのか、その鳩は少しだけ後ずさりした。僕は少しだけ面白くなって花束を鳩の前の地面に置いてあげた。

「食べるかな。」

やがて鳩は安心したように近づいてきて興味津々に花を見ていた。だがやがて花びらを引きちぎり始めた。ベンチの周りは花びらでいっぱいになった。鳩は構わずポッポと鳴き始める。僕は思わず「ポッポちゃん何やってるの」と叫んでしまった。

「ああ、ごめん。ポッポちゃんって。変な名前つけっちゃたね。」

思わず変な名前で呼んでしまった。でもその鳩はさぞ嬉しそうにポッポと鳴き始めたのだ。「ポッポちゃん、やけに喜んでいるなあ。」

ついこっちも嬉しくなってきた。

 

その時後ろから聞きなれた声がした。

「なにやってるの?」

まずい予感がした。

僕はベンチから立ち上がって後ろを振り返る余裕がなかった。振り返ると怖い予感しかしなかったのだ。ポッポちゃんを見つめることしかできない。でもポッポちゃんは明らかに気が付いていた。

ポッポちゃんの瞳は僕の後ろを眺めて透き通っていた。

 

周りには赤い花びらが散り、冷たい珈琲が残るのみである。