雑記ブログ卒業

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桜を想像しながら短編小説を書いてみた。お題「花びら」

 

今週のお題「2016上半期」

・注意点 この記事はいつもとは違う小説風です。時間と興味があれば読んでみてください。

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あれはとある春の日でした。何事もない毎日を過ごす午後4:00過ぎ。夕方になりもうすぐ日が沈みます。私は沈んでいく海の向こうをぼんやりと眺めていました。ここは海沿いの町。毎年桜並木がこの海岸沿いを染めます。

 

「今日も良い一日だったな。明日も晴れるといいな」と考えながら遠くの桜を眺めました。この後忘れられない出来事が起きるのも知らずに。

 

家に帰り、お気に入りのチェックの服を脱ぎました。しわくちゃの襟を眺めながら「もう買い替えようかな」と呟きいつもの机に向かいます。そう、そこは私の書斎です。

 

書斎といっても書斎らしいものは何もなく、ただの書類のファイルとパソコンが置いてあるだけでした。パソコンの電源を入れて画面を眺めます。

 

ブログというのは面白い。

ブログは時に人を飲み込む力を持っている。誰かの記事を読んで急に心に刺さるフレーズ、思わず「なるほど」と頷いてしまう記事の数々、そしてクスッと笑わせてくれる猫のブログ。

 

それはどれも私にとってかけがえのないもの。毎日、日が沈むと同時にパソコンの電源を入れる。このルーティ―ンは欠かしたことが無い。

 

これこそ私の生きがいだ。今日も良い日だ。何も変わらない人たちが変わらずにブログを更新している。この人は少し疲れていたのかな。文章が雑だ。

 

この人は以前よりも文章がとてもうまい。見違えるほどの文章力にただただ驚くばかりだ。私も負けてられない。すぐにブログを書かなきゃ。月が顔を出し空の中央にくるまでブログをひたすら書き続ける。

 

ブログは私にとって、切っても切れない生活の一部なのだ...。

 

ブツン。

 

急に我に返った。一気に辺りが暗くなった気がした。停電か?いや、そうじゃない。目の前のパソコンだ。私の前のパソコンの電源が落ちたのだ。

 

慌てることはない。こんな事よくある。文字を打っていたら急にパソコンが消えるのだ。私はその為にいつも下書き保存をこまめに行う。状況に合わせた良い判断力を働かせるのだ。

 

しかしこの時のパソコンの様子は少し違っていた。

 

その日の電源ボタンはもう用無しだった。ここまでストレスを感じたことはない。私は深々と椅子に腰かけ腕組みし目をつぶった。

 

今までのブログはどうなるのだろうか。パソコンを買い替える費用を計算しなくては。自分の何かが足りなかった気がした。パソコンにやさしく接する気遣いが足りなかったのだろうか。

 

目を開ければいつものパソコンがあって欲しかった。私は急にパニックになり何もかもかなぐり捨てる気持ちで外に出た。泣きながら走った。何もかも無くした気分だった。

 

桜並木の間を走る。その日の桜は頬を伝わる涙で何も見えなかった。気が付くととっくに日が沈んだ海岸沿いまで来ていた。もちろん海を眺めることもできなかった。

ただ悲しくて涙が出てきた。

 

「おーい、そこで何してるんじゃ?」

 

急に呼びかけられ振り向いた。辺りは真っ暗だ。誰だろう…。

 

目を凝らした声の先には例のおじさんがいた。「例の」というのは失礼かもしれない。しかしこう表現するのは理由があるのだ。

 

あのおじさんは嫌われ者だ。毎日朝早くに海岸沿いのゴミを拾っては何処かに消えてしまう。夕方になるとどこからともなく戻ってきて海岸沿いの色々な人に話しかける。

 

顔は無精髭を生やし綺麗とは言えない。当然誰もが話を聞かずに逃げていく。しかしおじさんは諦めないのだ。何度も何度も色々な人に声をかける。

 

こんな事があった。夕暮れの海岸沿いで男の子に声をかけたそうだ。だが30分後に警察が来た。男の子が怖がって親に連絡し当然おじさんは事情聴取を受けた。

 

しかしおじさんはただただごまかし適当な事しか言わなかった。警察は呆れ返って帰ったがその後も時々おじさんを監視し続けた。その噂はこの町中に広がりやがてゴミおじさん、声掛けおじさんと呼ばれるようになった。

 

私も自然とそのおじさんを避けるようになっていたのだ。

 

「おーい、そこで何してるんじゃ?」

 

急に呼びかけられ振り向いた。先には例のおじさんがいた。

 

「何でもないです。」

 

「何でもないわけないじゃろ。なんで泣いとるんじゃ。」

 

「…」

 

パソコンが壊れたなんて言う勇気はなかった。この人にこの話をして何のメリットがあるんだろう。ここは適当になんか喋ってごまかそう。

 

「あの。海がきれいだなと思って...。」

 

「...本当じゃのー。わしゃ海が好きじゃ。どうして好きか分かるか。それはな、どんなに辛いことも飲み込んでくれるからじゃ。わしゃな、何かあるたびにこの海を見るんじゃ。そうすればどんな事も乗り越えられる。

 

あの桜も綺麗じゃろ。いいか?桜は毎年花を咲かせるんじゃ。一回咲いて枯れる桜はない。一度枯れはするが来年になればもっと綺麗な花が咲く。

 

いいか?お前はもっと大きな花を咲かせる素質を持ってる。それを生かすも殺すもお前次第じゃ。」

 

急に力が出てきた気がした。何分経っただろう。

 

ありがとうございます、と言った先におじさんの姿はもうどこにも無かった。急に風が吹いてきて桜の花びらが海岸を覆った。

 

あの日以来、「例のおじさん」には一度も会っていない。

今日で今年の半分が終わる。

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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